2023年・2024年・2026年のカタログデータを基に、主要6メーカーのシェークハンドラケット市場を分析しました。価格・重量・ラインナップ数の変化から、各メーカーの製品戦略や市場動向を読み解きます。
1.はじめに
近年、シェークハンドラケット市場はどのように変化しているのでしょうか。価格だけでなく、平均重量やラインナップ数にもメーカーごとの特徴が表れています。
本記事では、2023年(222本)・2024年(227本)・2026年(263本)のカタログデータを基に、主要6メーカーのシェークハンドラケットを比較・分析しました。平均価格・平均重量・ラインナップ数の変化から、市場動向や各メーカーの製品戦略を読み解きます。
2.調査概要・比較条件

※調査対象は、商品ラインナップが豊富で、公式カタログに平均重量を掲載している6メーカーです。なお、2025年は正確なデータを収集できなかったため、比較対象から除外し、2023年・2024年・2026年の3時点で分析を行いました。
集計方法・注意事項
各メーカーで平均重量の表示方法は異なりますが、本記事では同一の数値として比較しています。なお、ラージボール用ラケットおよび特殊グリップ(ニッタク「テナリー」)は調査対象外です。
表示例(平均重量80g):バタフライ「80g」、JUIC「80±5g」
3.シェークハンドラケット市場全体の推移
(1)平均価格の推移

2023年から2026年にかけて、シェークハンドラケットの平均価格はメーカーごとに異なる動きを見せました。全体平均は16,619円(2023年)から17,145円(2026年)へと上昇しており、市場全体では緩やかな価格上昇傾向が続いています。
一方で、その背景はメーカーによって大きく異なります。バタフライは2023年比で約1,700円低下した一方、ニッタクは約2,200円上昇しました。また、ヴィクタスは約13,000円台、スティガは約2万円前後で推移しており、それぞれ異なる価格帯を維持しています。
このように、平均価格の変化は単純な値上げ・値下げだけではなく、各メーカーのラインナップ構成や製品戦略の違いが反映された結果と考えられます。次章では、その背景について詳しく見ていきます。
(2)平均重量の推移

2023年から2026年にかけて、各メーカーの平均重量は全体的に大きな変化は見られませんでした。全体平均も85.3g(2023年)から85.4g(2026年)と、ほぼ横ばいで推移しています。
メーカー別では、バタフライが2024年に87.8gまで増加した後、2026年には86.1gまで低下しました。一方、ニッタクは85.7gから86.6gへとやや重くなる傾向が見られます。ヴィクタスは3年間を通じて最も軽量な平均重量を維持しており、スティガは86g台後半で安定しています。
比較的高価格帯のバタフライやスティガは重め、低価格帯のヴィクタスは軽量な傾向が見られました。ただし、平均重量は価格だけで決まるものではなく、各メーカーの製品コンセプトや採用素材、ラインナップ構成なども影響していると考えられます。
このように、近年のシェークハンドラケット市場では価格に変化が見られる一方で、平均重量は各メーカーの特徴を維持したまま推移しており、重量に対する考え方には大きな変化がないことがうかがえます。
(3)ラインナップ数の推移

2023年から2026年にかけて、シェークハンドラケットのラインナップ数は全体的に増加しています。調査対象6メーカーの合計は222本(2023年)から263本(2026年)となり、3年間で41本増加しました。
メーカー別では、ヴィクタスが53本から68本、ニッタクが40本から55本へと、それぞれ15本増加しており、積極的なラインナップ拡充が見られます。一方、バタフライ、スティガ、アンドロ、TIBHARは増加幅が比較的小さく、既存ラインナップを維持しながら新製品を追加する傾向が見られました。
このように、近年のシェークハンドラケット市場ではメーカーごとに製品展開の方向性が異なります。特にヴィクタスとニッタクはラインナップを大幅に拡充しており、4章ではこうした違いが平均価格にどのような影響を与えたのかを詳しく見ていきます。
4.メーカー別分析

(1)バタフライの価格低下の分析
バタフライの平均価格は2024年の21,353円から2026年には19,865円へと約1,500円低下しました。しかし、SUPER ZLCやCNFなどの最上位モデルは依然として高価格帯を維持しており、プレミアム路線に大きな変化は見られません。
一方で、2026年は中価格帯モデルが充実し、価格帯の選択肢が広がりました。アウターフォースシリーズやレボルディアシリーズ、張本智和シリーズなどが幅広く展開されたことで、ラインナップ全体の平均価格が低下したと考えられます。
(2)ニッタクの価格上昇の分析
ニッタクの平均価格は2024年の14,536円から2026年には17,686円へと約3,150円上昇しました。しかし、これは価格改定だけが要因ではありません。
2026年は中・高価格帯モデルが充実し、ラインナップの幅が広がりました。「Hina Hayata」シリーズや「アドバンスカーボン」、「エボニーウッド」などが追加されたことで、平均価格が押し上げられたと考えられます。一方で、「剛力」シリーズや「キョウヒョウ龍5」などの最上位モデルも継続しており、高価格帯からエントリーモデルまで幅広い製品構成を維持しています。
(3)VICTASの低価格について
ヴィクタスの平均価格は2026年時点で13,608円と、調査した6メーカーの中で最も低い水準となっています。一方で、ラインナップ数は68本と最も多く、幅広いプレーヤーに対応した製品展開が特徴です。
2023年から2026年まで平均価格は約13,000円台で推移しており、大きな価格変動は見られません。木材ラケットを中心に、中価格帯やエントリーモデルが充実していることに加え、軽量モデルも多くラインナップされています。その結果、豊富なラインナップを維持しながら、価格を抑えた製品構成となっていることが特徴です。
(4)TIBHARの価格上昇
TIBHARの平均価格は2023年から約1,800円上昇しました。これは一律の価格改定ではなく、「アレクシス・ルブラン」シリーズや「フェリックス・ルブラン」シリーズ、「Miyuu Kihara BINGO」など、高価格帯の新モデルが追加されたことが主な要因と考えられます。
一方で、サムソノフシリーズの一部はラインナップから外れており、契約選手モデルを中心とした製品構成へ変化していることがうかがえます。その結果、高価格帯モデルの比率が高まり、平均価格の上昇につながったと考えられます。
【コラム】今後のシェークハンドラケット市場はどう変わるのか(筆者の考察)
今回の調査では、平均価格やラインナップ数には変化が見られた一方で、平均重量は3年間ほとんど変化しませんでした。このことから、多くのユーザーが求める重量帯はすでに確立されており、各メーカーは性能そのものよりも、価格帯やラインナップの充実によって差別化を図っているように感じます。
また、ラバー市場では新技術が次々と登場していますが、ラケット市場ではサイバーシェイプのような特徴的な製品はあるものの、市場全体を大きく変える技術革新は少ない印象です。今後も各メーカーは、契約選手モデルやデザイン性などを含めた製品展開で競争していくのではないでしょうか。
一方で、卓球ラケットは現在も木材を主体とした構造が主流です。もし将来的に素材に関するルールが見直されれば、市場は大きく変化する可能性があります。個人的には、木材を使わないラケットが登場する世界も見てみたいと思う一方で、檜単板ラケットのような天然木ならではの魅力は、これからも大切に受け継がれてほしいと感じています。
5.まとめ
最後に、2026年時点における主要6メーカーの特徴を一覧表にまとめました。

本記事では、2023年・2024年・2026年のカタログデータを基に、主要6メーカーのシェークハンドラケット市場を比較・分析しました。その結果、平均価格の変動は単なる値上げ・値下げではなく、各メーカーのラインナップ構成や新製品投入など、製品戦略の違いが大きく影響していることが分かりました。
ラケットはラバーと比べると性能差を体感しにくい用具であり、新素材だけで差別化することは容易ではありません。そのため、ラケット市場は単なる性能競争ではなく、「誰に、どの価格帯で、どのような製品を届けるか」というメーカーごとの戦略が色濃く表れる市場といえるでしょう。各メーカーは契約選手モデルや価格帯、ラインナップの充実など、それぞれ異なる戦略でブランドの魅力を高めており、その違いは今回のデータにも数字として表れていました。
卓球用品は、単に「高い・安い」「軽い・重い」だけでは語れません。新製品が発売された理由や、長年販売され続けるロングセラーモデル、惜しまれながら廃番となるモデルにも、それぞれメーカーの考え方があります。そんな視点でカタログや新製品情報を眺めてみると、用具選びはもちろん、卓球メーカーの製品戦略そのものも、これまで以上に楽しめるのではないでしょうか。
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