1.はじめに
大事な試合で、体調は悪くないのに「今日はなんだか卓球の調子がイマイチだな」と感じたことはありませんか?
もしかすると、その原因は自分の調子そのものではなく、普段練習している卓球場と試合会場の「広さ」や「音の環境」の違いにあるのかもしれません。
今回は、「会場の広さ」と「打球音」の関係について、私自身が試合で経験したことをもとにお話しします。
2.広い体育館に抱いていた苦手意識

私は、出場人数が多く、広い体育館で開催される試合に出場することに、以前から苦手意識を持っていました。
なぜなら、自分のプレーがいつもより小さくなったように感じ、普段より自分が弱くなったように感じるからです。
具体的には、次のような感覚がありました。
- 自分が打ったボールが、普段より非常に遅く感じる
- 相手の打ったボールの予測精度が低く、返球が難しく感じる
- 自分が打ったボールの弧線をイメージしにくい
当時は、きっと大規模な大会という雰囲気に飲まれ、気持ちがナーバスになっているからだと思っていました。
そのため、過度に緊張しないように工夫すれば、この問題は解決できると安易に考えていたのです。
ところが、それは自分の思い違いでした。実は、別の明確な原因があったのです。
3.原因に気付けたきっかけ
私が、数百名もの選手が出場する団体戦に臨んだときのことです。
試合当日は睡眠不足も身体の疲れもなく、体調は全く問題ありませんでした。
ところが、午前と午後で、まるで別人のような違いを感じました。
午前:調子が悪いと感じる(イメージ通りのプレーができない。)
午後:イメージ通りのプレーができる(調子が良い!)
体調は変わっていないのに、午前と午後で全く逆の状態を経験したのです。

では、なぜこれほど違ったのでしょうか。
調子に影響を与えていたのは、『打球音』だったのです。
午前中と午後を振り返ると、2つの大きな違いがありました。
(1)午後になり、敗退した選手が帰宅したことで人の数が大幅に減り、比較的静かな環境になっていたこと。
(2)試合をする卓球台が体育館の端、壁の近くにあったため、自分の打球音が反響してよく聞こえる環境だったこと。
この2つの条件が重なり、自分や対戦相手の打球音がしっかり聞き取れるようになったことで、自然と普段どおりのプレーができていたのです。
つまり午前中も、本当に調子が悪かったわけではありません。打球音が聞きづらかったため、自分で「今日は調子が悪い」と思い込んでいただけだったのです。
この経験から、普段は何気なく聞いていた「打球音」が、卓球のプレーにとって意外に重要な情報になっていることに気づきました。
4.打球音が聞きとりづらい環境

(1)広い試合会場
試合会場が広くなると、普段の練習環境と比べて自分の打球音が響きにくく、聞こえにくく感じることがあります。
私は普段、比較的狭い中規模の体育館などで練習しています。そのため、普段より何倍も広い体育館では、自分の打球音が小さく感じられたのも不思議ではありませんでした。
(2)出場選手や観客が多い
体育館にいる人が増えると、周囲の話し声や応援、さまざまな打球音などが重なり、自分や相手の打球音が聞き取りにくくなります。
(1)(2)のような環境では、打球音から得られる情報が普段より少なくなります。
すると無意識のうちに、
「今日の自分のフォアドライブは走っていない」
「いつもと違う。調子はイマイチだ」
このように、実際のプレーとは別のところで「調子が悪い」と判断してしまうことがあります。
芯に当たったときの打球音は心地よく、気持ちを乗せてくれるものです。
また、相手の打球音も、ボールのスピードや回転などを判断するための重要な情報になります。
つまり、相手の打球の性質を判断する材料がいつもより少ない状態で、普段と同じプレーを自分に求めるのは無理があります。
5.騒がしい環境における考え方

原因がわかれば、考え方を変えることで、騒がしい環境でも試合に集中しやすくなります。
(1)聞きづらい状況を受け入れる
原因がわからず「なんか調子が出ない」と感じている状態と、「今日は打球音が聞き取りにくい」と認識できている状態では、大きな違いがあります。
「今日はいつもより音が聞こえにくい」と認識したうえで、できるだけ自分や相手の打球音に意識を向けることで、普段のプレー感覚を取り戻しやすくなります。
(2)条件は相手も同じ
周囲が騒がしく、打球音が聞き取りにくいのは相手も同じです。
「自分だけが不利なわけではない」と認識するだけでも、必要以上に弱気にならず、目の前のプレーに集中しやすくなります。
(3)騒音環境に慣れる
市民プレーヤーにはなかなか難しい方法ですが、中国ナショナルチームでは、試合会場に近い環境を再現するため、録音した応援や歓声を体育館で流しながら練習する「騒音訓練」が行われることがあります。
日本代表チームも、中国での試合では大きな応援に囲まれることがあるため、同様に騒音のある環境を想定した練習を行うことがあるそうです。
私たち市民プレーヤーが同じような環境を再現するのは難しいですが、「普段とは違う音環境でもプレーすることがある」と知っておくだけでも、試合当日の戸惑いを減らせるのではないでしょうか。
コラム:会場の広さで、トップ選手のプレーも違って見える?
私がこの記事を書いていて、もう一つ興味深いと感じるのが、ドイツのブンデスリーグ等の国内リーグと世界選手権やオリンピックなどの試合会場の違いです。
ドイツのブンデスリーグは、比較的コンパクトな会場で試合が行われることが多く、選手の打球音がよく響きます。
動画で観戦していても、ラリー中の打球音がはっきり聞こえるため、選手のプレーがとてもダイナミックに感じられることがあります。
一方、同じ選手が世界選手権やオリンピックなどの非常に大きな会場でプレーすると、動画で見ていても、なぜかプレーが一回り小さく見えると感じることがあります。
もちろん、これは会場の広さだけでなく、カメラの位置や音響、観客の多さなど、さまざまな要因が関係していると思います。
それでも、「打球音がしっかり聞こえるかどうか」で、同じ選手のプレーから受ける印象まで変わるというのは、とても興味深いことではないでしょうか。
6.さいごに
以前、私は知り合いのプライベート卓球場で練習をさせていただいていたことがあります。そこは卓球台が2台だけの、とても静かな環境でした。
その卓球場では、いつも気分よくプレーすることができ、「自分は数段強くなったのでは?」と感じていました。
今振り返ると、小さな卓球場だったため打球音が明瞭に聞こえ、自分や相手の打球から得られる情報が多かったことも、気持ちよくプレーできた理由の一つだったのだと思います。
今でも、参加者が多く、大きな体育館で行われる試合は得意ではありません。
しかし、少なくとも「原因不明の不調ではない」と認識できているので、以前よりも落ち着いて試合に集中できるようになりました。
もし大きな試合会場で「今日はなぜか調子が悪い」と感じたら、「打球音がいつもと違って聞こえていないか?」と、一度考えてみてください。
もしかすると、それだけで自分のプレーを少し違った視点から見直せるかもしれません。

この記事が、みなさまの試合で少しでも参考になれば幸いです。
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