1.はじめに
みなさんが使っているラケットは、木材のみで作成された「木材ラケット」ですか?それとも板の間に木材以外の素材が挟まれている「素材ラケット」ですか?
初心者の方であれば、あまり気にしないかもしれませんが両者には大きな違いがあります。
今回は、その違いについて考察していきましょう。
クイズ:アイキャッチ画像のラケットで一本だけ素材ラケットです。見分けられますか?
2.「素材ラケット」とは?
ラケットに使用できる素材に関するルールを確認してみましょう。
1.4.2 ラケット本体の厚さの少なくとも85%は、天然の木でなければならない。ラケット本体内の接着層は、炭素繊維、ガラス繊維、あるいは圧縮紙のような繊維材料によって補強することができる。ただしその接着層の1つの厚さは、全体の厚さの7.5%または0.35mm(いずれか小さい方)以下でなければならない。
参照元:日本卓球ルール(2023)
このルールから、ラケット厚さの15%までは「繊維素材」よって補強することできることが分かります。
このルールに則ってラケットの木材の板の間に「繊維素材」を挟み込んで作成されたラケットを一般的に「素材ラケット」と呼んでいます。
繊維素材としては、炭素素材(カーボン)が主に使用されていますが、その他の素材も使用されており、3つのタイプに分類されます。
- 炭素素材(カーボン)のみを使用したラケット
- その他の繊維素材のみを使用したラケット
- 炭素素材(カーボン)とその他の素材を編み込んだ素材を使用したラケット
それぞれに特徴があるラケットが開発されていますが、今回は「素材ラケット」とまとめて扱っていきます。
【参考画像】インナーフォース レイヤー ZLC(バタフライ)
炭素素材(カーボン)と、ZLファイバーを交互に編み込んで作られた素材が挟み込まれている。
3.主流は「素材ラケット」
トップレベルの世界では、「素材ラケット」が主流となっています。
例えば2023年卓球全日本選手権(男子)のベスト16全員が「素材ラケット」を使用しています。
理由は、「反発力(良く弾む)」という性質を強化できるからです。
※詳細は後述します。
では、「素材ラケット」と一択ではないか?と思われるかもしれませんが、「木材ラケット」も魅力的な長所があるのです。
次に、それぞれの違いについてご説明していきましょう。
4.「木材ラケット」と「素材ラケット」の違い
では、本題に入っていきます。
(1)打球の均一性
これについては、卓球王国別冊「卓球グッズ2016」に非常に分かりやすい表現がありましたので、紹介させていただきます。
どこに当たってもある程度飛ぶ素材ラケットと、芯に当たるとすごいボールが出る木材ラケットは、野球の「金属バット」と「木材バット」のような関係
参照元:卓球王国別冊「卓球グッズ2016」
・「木材ラケット(木製バット)」・・・芯に当たれば最高のボールが打てる
・「素材ラケット(金属バット)」・・・ラケットのどの部分で打球しても一定以上の質のボールが打てる
非常に分かりやすい喩えだと感じました。個人的には、この違いが決定的な違いではないかと感じています。
以前私は、ペンホルダーラケットの王道と言える「ヒノキ材の単板ラケット(木材100%)」を使っていましたが、芯に当たった時の爽快感は最高でした。
(2)打球の軌道
・「木材ラケット」・・・打球の軌道が「弧線」を描きやすい
・「素材ラケット」・・・打球が直線的になる
卓球を経験した方であれば、ドライブが「弧線」を描いた方がミスを減らすことが出来るのは、ご理解頂けると思います。直線的なボールは、オーバーミスやネットミスが比較的増えますが、より攻撃的な打球となります。
(3)打球スピード
・「木材ラケット」・・・「素材ラケット」と比較すると反発力は弱い
・「素材ラケット」・・・「特殊素材」の効果により反発力が強い
要するに「素材ラケット」の方が、打球スピードが出しやすいということになります。
「木材ラケット」は、反発力が弱い分ラケットでボールをしっかりとらえることが出来るので、回転をかけやすくなります。
(4)ラケット性能の均一性
同じ種類の木材でも、一本の木から削りだす板を同じ性質にすることは非常に困難です。従って、以下のような違いが生じます。
・「木材ラケット」・・・同じラケットでも微妙に弾みや打球感が変化する
・「素材ラケット」・・・「木材ラケット」と比較すると性能のバラツキが少ない
「木材ラケット」は、合板の数が少ないほど性能のバラツキが大きくなります。特に単板ラケットは、同じ性能のラケットを探すのは非常に困難です。
「素材ラケット」の場合、特殊素材は全く均一の性質であるため、ラケット性能のバラツキがかなり少ないと言えます。打球感が限りなく近いスペアラケットを用意したい場合は、「素材ラケット」がおすすめです。
(5)ラケット価格
・「木材ラケット」・・・比較的安価
・「素材ラケット」・・・高額なラケットが多い
特殊素材が高価なためラケット価格が高くなるようです。高反発の「木材ラケット」は、比較的安価に購入できるので人気がでることがあります。
5.まとめ
両者の違いをまとめると以下のとおりとなります。
※一般的な比較を行いましたが、高反発の木材を使用した「飛ぶ木材ラケット」や「弾みを抑えた素材ラケット」も存在しますので、ご了承ください。
いかがだったでしょうか?「素材ラケット」が主流ではありますが、「木材ラケット」の良い点もご理解いただけたと思います。
また、両者のデメリットについては、ラバーによって補うことも可能です。自分にあった用具を見つけるためには、ラケットとラバーの組み合わせも考慮する必要があるのです。
ラケットとラバーの組み合わせについては、別の記事で紹介しています。興味のある方は是非ご覧ください。
以上となります。皆さまの参考になれば幸いです。
クイズの答え:インナーフォース レイヤー ZLC(バタフライ)(右から2番目)
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