1.はじめに
初心者の方は、粘着ラバーを使う機会はあまりないかもしれません。
そこで今回は、粘着ラバーの魅力についてお話ししたいと思います。
現在、ラバーの主流は明らかにテンション系ラバーです。
テンション系ラバーは、スピード能力が高く、中後陣から非常に打ちやすく、打ち方によっては粘着ラバーより回転がかかります。
テンション系ラバーの方がいいことばかりで一択ではないかと思うかもしれません。
ですが、一定数のトッププレーヤーが粘着ラバーを使用しています。
なぜだと思いますか?
キーワードは「癖球(くせだま)」です。
では、初心者の方でも理解していただけるように、癖球について説明する前に、粘着ラバーとはどんなラバーかについて触れていきたいと思います。
2.粘着ラバーとは
卓球のラバーは、2層になっています。
①ボールが当たるトップシート(ゴムシート)
②ゴムシートを支えるスポンジシート
※①のゴムシートのみのラバーは「一枚ラバー」と呼ばれます。
①のゴムシートは、粒の面とツルツルの面があります。
粒の面が打球面になっているラバー「表ソフトラバー」
ツルツル面が打球面になっているラバー「裏ソフトラバー」
このようにトップシートの粒の位置によって、名称が変わります。
粘着ラバーは、①のトップシートに粘着成分を付着させることによりボールが接触した際の摩擦力が大きくなるようにしてあります。
なお、粘着成分をラバーの表面のみに付着させる場合と、ゴムシート全てに粘着成分を溶かし込んで作る方法があります。
3.そもそも癖球(くせだま)とは?
粘着ラバーの特徴として「癖球(くせだま)」があります。
これは、粘着ラバーの特徴として使われる表現です。
この「癖球(くせだま)」を説明するために、まずはテンション系ラバー(高弾性ラバーも含む)の性質について触れておく必要があります。
(1)テンション系ラバー(高弾性ラバーも含む)の特徴
現在、主流であるテンション系ラバーは、ボールをインパクトした際に、ボールがラバーに食い込んで弾き出すために、相手の打ったボールの球質を吸収して打ち返します。
そのためにスイングが正しければ、ラケット角度が多少誤ったものであっても、ラバーが補正してくれるので、相手コートにミスなく返球しやすいという特徴があります。
細かいラケット操作がなくても楽に打てるので、車のAT車になぞらえて『オートマティック感がある』と表現する場合もあります。
言いかえると相手の打ったボールの球質に左右されずに、一定の球質のボールが打てる。
ということになります。
(2)粘着ラバーの特徴
粘着ラバーの場合は、トップシートの粘着性が活かせるようにスポンジが固いもの使われる場合が多いです。
これは、テンション系とは逆に、ボールをインパクトした際に、ボールがラバーに食い込みにくいので、ラケット角度の誤りはミスに直結してしまいます。
このことが、一般的に粘着ラバーは扱いが難しいと言われる理由のひとつです。
【参考】
スポンジを固くするのは、摩擦力が高い粘着シートの高い回転性能を最大限に活かすためです。
※ラバーがボールに回転をかける要素は、①単純な摩擦力、②ゴムのひきつれ効果の二つがありますが、①単純な摩擦力を活かすためです。
①と②の関係についての解説は割愛します。別の機会に解説したいと思います。
(3)癖球とは?
上記の(1)(2)から、粘着ラバーはスポンジが固いために相手のボールの球質を吸収しきれないので、返球した打球に相手のボールの球質を残すことになるのです。
以上のことから粘着ラバーで打った打球は、
これが粘着ラバーで返球したボールが癖球(くせだま)と呼ばれる理由です。
4.粘着ラバーを使用する利点
以上のように粘着ラバーには、非常に個性的な特徴があることが分かりました。
(1)癖球(くせだま)が打てる
粘着ラバーで返球することにより、自分の打ち方は同じでも、相手の球質により変化が生まれます。
・打ったドライブが、相手コードでバウンド後に伸びる
・打ったドライブが、相手コードでバウンド後に沈む
これは、詳しく話すと長くなってしまうのですが、簡単に言うと、自分の打ったボールのスピードと回転量のバランスによってバウンド後に伸びるたり、沈んだりするのです。
対戦相手にとっては、変化を予測できないため実に取りにくいのです。
また、テンション系ラバーの場合は、バラツキのない球質のボールを返球することになるので予測がしやすく、粘着ラバーよりは対応しやすいと言えます。
(2)弾道をコントロールしやすい
これは、スポンジが固いことが有利に働いています。
ボールをインパクトした際に、ボールがラバーに食い込みにくいので、ラケット角度の誤りはミスに直結すると述べましたが、実はメリットにもなりえるのです。
ラケット角度をきちんと調整すれば、角度に応じた弾道を生み出せるのです。
その点、テンション系ラバーは、先に述べたとおりラケット角度をラバーが補正してくれるので、粘着ラバーほどの自在性はないのです。
粘着ラバーは扱いが難しいと言われますが、自由度が高い用具なのです。
以上のような利点があることから、粘着ラバーを選択するトップ選手もいるのです。
5.まとめ
粘着ラバーの特性について「癖球(くせだま)」を中心に述べましたが、いかがだったでしょうか?
粘着ラバーと言っても、特徴を最大限に活かせるよう非常に扱いが難しいものから、特徴をややマイルドにして扱いやすくしたものなど様々な製品があります。
自分のやりたいプレーに合わせた粘着ラバー選びも可能なので、初心者の方や全く使ったこともない人の一度は使ってみてほしいと思います。
粘着ラバーの種類は、大きく分けて3~4種類ほどに分類されます。以下の記事に詳しく記載していますので、興味のある方は是非ご覧ください。
以上となります。参考になれば幸いです。
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